稲荷社鳥居建替えに携わって

2016/05/01
株式会社浅草屋野口工務店 代表取締役 野口和人

 今年3月27日の初午大祭に向けて稲荷社鳥居建替えの依頼を戴いたのは2年前の秋の事でした。 約80基の丸太鳥居(実際には77基)と明神型の大鳥居の建替え。 今までにも、10基程度の同時建替えの経験はあるものの、77基同時製作は初めてでした。

  今回の工事でいちばん大変だったのは、工程調整でした。 初午大祭の通り初めの日から逆算をし工程を組み、丸太の買い付け(立木の伐採時期は水を吸い上げない秋以降) その後皮むき木造り〜墨付け〜加工〜仕込み〜塗装と工程は進みますが、80基からあると丸太だけで、 240本、貫、額束、楔まで合わせると720部材、塗装に至っては3回塗りなので2160回。 これだけの作業を他現場と並走しながら5ヵ月程かけて行うことでした。
 
  工場作業では、20代、30代、50代、70代と年齢の違う職人による適材適所での作業でした。 熟年職人が知識を中堅が技術を伝承し、若い衆は体力で補いながら学んでいく理想の姿です。
  私の親も宮大工でしたが、まだ私が東京で修行中、21歳の時に他界し一度も一緒に仕事をすることが出来ませんでした。 ただ、早くに親を亡くした事、今思えばそれが幸いし貪欲に勉強する事が出来ましたし、精神的にも強くなれたと思います。 私が現在、宮大工として30年以上携わり思うことは、後進の育成です。 しかし昨今、職人の世界にもゆとり世代の問題があり、昔のようなガッツのある若者が少ないのが悩みです。

  年が明けて順調に塗装も終わり、現場での建替えの為、既存の鳥居及び基礎の撤去作業に入りました。 前回の製作がとても頑丈に造ってあり、想定の3倍以上のコンクリートをはつり撤去する事になりました。 工期が迫っていたので人員を増やし雨天でも作業を行うことになり、参拝者、近隣の方々には大変ご迷惑をおかけしました。

  修復や建て替えをするときに、残された様々な継手や仕口、工法を見て、先人がどのように加工したのか、 なぜこの工法で仕事をしたのか等、日々思いを感じながら勉強し作業をしています。 私どもが、手掛ける社寺建築はみなさんが手を合わせ祈りを捧げるわけですから、手を抜きたくありません。 一生のうちに手掛けられる建物は数えられるほど、だからこそ妥協をせず見えない部分ほど疎かにせず、 また、楽しく作業をするという事も大切に考えて今後も社寺建築に携わって行きたいと思います。

 このたびは 稲荷社鳥居建替え工事に携わったすべての方々のおかげを持ちまして無事作業を終えることが出来ました。 本当にありがとうございました。

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