神前灯篭・社標塔移設工事に携わって

2014/10/01
嶽石工業有限会社 常務取締役 楠名康弘(伝統工芸士・1級技能士)

 私は石の都岡崎で、祖父から代々受け継がれた石屋の家系に生まれ、子供の頃から石に囲まれ育ちました。高校を卒業後は迷わず石屋の道に進みました。父親は灯篭の加工一筋で石屋を営んでおりましたが、私が石屋を始めた時、これからは建築や土木工事も行える総合的な石屋になれと言われ、入社当時から多くの親方の元に派遣され、色々な経験をさせて頂きました。合わせて灯篭の技術も父親から学び、石屋業界の中では異色の職人の形になり、現場で特に手加工技術を発揮出来る形の仕事を多くすることになりました。
 
  過去にも多くの灯篭移設を行ってきましたが、今回の深川神社様の灯篭移設工事の際は、伊藤平左エ門建築事務所の望月さんより硬度計算された耐震施工図面を頂き、中心にステンレス45mmの1本棒を入れ、灯篭の笠の重さが火袋に余りかからないようにステンレス棒が支え支柱となる施工をして下さいと言われ、今までになく、丈夫な施工を学びながら作業がする事が出来ました。
 
  今回の工事で、耐震施工以外で特に心掛けたのは、解体前より数段良く見えること、見えない所までもしっかりと施工をすることでした。見える場所は誰でもきれいに作り上げると思いますが、後世まで良い技術を継承するには、見えない場所までも及ぶ職人の心掛けが大切だと思います。今回一緒に作業をした修業生の若い職人にも感じられるように作業を致しました。
 
  自分自身が多くの人から学んできた技術や教育を次世代の石職人に伝える為、自社では養成工として修業生が住み込みで働いています。今回の灯篭移設工事は、私自身も学びある現場でしたが、若い職人には、とても学びの多い現場となりました。特に間知石積は、崩れ掛かっている物を最前の形に現場で加工をし、見栄えと丈夫さを復元する形は、必ずや学びのある現場になったと思います。それに加えて現代施工を取り入れた形になったので、更によく学べ、忘れられない作業をさせて頂いたと感じました。
 
  今の時代、伝統工芸を守っていくのはとても難しい時代になってきたと思います。どれだけ素晴らしい伝統工芸品を作っても販売できなければ成り立ちません。その為、石屋業界でも伝統工芸士になろうとか、1級技能士になろうと思う職人がなかなか増えずに、技術を継承していくには難しい時代になっていると思います。

  ですが、私自身、先代の父親の「作ることを忘れてはならない。守らなければならないものは必ず守れ」の教えから学んだ事を、自分の息子たちの世代にしっかりと繋げていくという使命があると思っております。今後もその使命と責任の信念を貫いて、お客様から喜ばれる仕事をして、多くの良い仕事をしていきたいと思います。
 
  最後に、深川神社灯篭移設工事の際に温かく見守って頂いた皆様のおかげを持ちまして、無事に作業が出来たと思います。本当に感謝いたします。有り難う御座いました。

神前灯篭解体中

神前灯篭土台石5段目設置中

解体前

解体後

 間知石が解体前は1段しか見えていないが、新たに設置の際は、2段全てが見える様にしてあります。全て洗浄をして、元の 石の色も復元しました。

お盆休み前の工事最終日、最終段階の設置や清掃、地均し等を行っていた際に、突然クスノキの大木が倒れました。原因は根腐りですが、元々灯篭があった場所に倒れたので、びっくりしましたが、事故にあわずに良かったです。

石嶽石工業(有)の工場風景です。
灯篭が数百基立っております。
                       
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