六角陶碑の調査に携って

2013/10/04
作陶家 長江重和

 「大変恥ずかしい」
これが今の私の気持ちです。
六角陶碑の存在は知ってはいたものの興味はなく、こんなにも素晴らしいものだとはまったく思ってもいませんでした。今回の調査で改めて外側をじっくりと観察し、そしてフタを取った内側まで見る事が出来ました。調査が進むほどますます素晴らしいとの思いが強くなりました。
そして、この文を書くにあたり、何度ともなく確認のため六角陶碑を見に行きました。威圧される力まで感じました。

調査中の陶碑

【写真上】=調査中の六角陶碑  【写真下】表面に刻まれている文字

六角部分に刻まれた文字

こんな私ですが、気持ちを切り替えて私なりの考えを書き進めます。今回は文字が削り込まれている六角部分について書きます。

1. 製造について(丸窯の中での製造)

(1) 窯の中の床部分から15p ほど上げてタナ板を水平に並べる。 
・タナ板の下に炎が通るようにするため。
(2) タナ板の上にシャモットをひく。
※シャモット・・・耐火煉瓦の材料。
(3) 本体を作る土と同じ土でタナ板の上に板を作る。
・本体の焼き縮み分をこの板でカバーする。(焼きトチ)
(4)(3)の板の上にシャモットをひく。
(5) 本体の底になる部分の板を(4)の上に作る。
・底板がありその上に作っていっていたほうが構造的に強いのでこの方法だと考える。
(6) ブロック状にした土を底板の上にドベを付け、貼り合わせながら重ねていく。
・ブロックは形状によりそれぞれの木枠を作り、その中に土をたたき込み作る。
・ブロックの土の厚みは、下に使うものは6寸 上に使う物4寸高さはそれぞれ4寸。
・ブロックの上からの図 図

六角陶碑を観察すると、水平に細いキレが所々に見られる。その上下の間隔が約4寸なので(6)の作り方だと考える。この方法だと手早く、なおかつ土を木枠にたたき込む時に木ヅチなどでしっかりたたき込めば、土がしまるので良い方法だと思う。
上下のブロックの厚みの差は、下の方により重量がかかるためである。実際の六角陶碑も下の部分が広がった形になっている。

2. 文字の削り込みについて

(1) ブロック状の土を積み上げ出来上がった本体の表面に、本体を作る時に使った土よりも細かな土を化粧土のように塗り重ねる。(厚みは3分(1寸の3/10))
・六角陶碑の内部を観察した時に、外側に表面の土よりもかなり荒い土が本体に使われていたように思えたためこう考える。
(2) 化粧土を塗り重ねた表面に文字を墨書きし、その文字部分を削り込む。
・(1)で塗った化粧土部分だけが削り取られるので、文字のおくが平に仕上がる。

1.2.の作業は窯の中で行うため乾燥の調整がしやすく作業が進めやすい。

3. 焼成について

(1) 作品が大きく、厚みもあるので乾燥に時間がかかる。当然、焼成も時間がかかる。
・丸窯での焼成経験がないのでこの事についてこれ以上考察できない。

4. 運搬について

(1) 窯の口を壊して作品を出したと言われている。
・作品を横に倒すのは壊れてしまう心配があるので、立てたまま運んだと考える。やぐらを組み、滑車を利用して持ち上げ台座を差し込み、コロで運んだ。こう考えると窯のアーチ部分も壊す事になると思う。
・作品を台座にのせヒモで固定する。そのヒモを紅白で飾り、時間をかけて運んだ。今で言えば伊勢神宮のご神木を運ぶような感じで運んだと考える。作るのもお祭り、焼くのもお祭り、そして運ぶのもお祭りである。

上から見た六角陶碑内部

上から見た六角陶碑内部

1867年に作られたとされるこの六角陶碑をその時代とともに重ね合わせて考えると、瀬戸窯業の力強さをひしひしと感じる。瀬戸の人たちの9割以上が焼き物に関係する仕事をし、活気あふれる町がみえてくる。その象徴がこの六角陶碑なのだと思う。

最後に私が考える六角陶碑についてもう少し書きます。
「六角陶碑は立体屏風である。」
六面の屏風を立体にするとこの形になる。改めて一面のタテ、ヨコのバランスを見てみると、まるで屏風のようである。そのために六角形となっていると考える。
全体の色彩については、文字部分以外は釉がほどこされているので、使われた釉の色だと考える。
文字部分は立体屏風だと考えるので、文字以外の部分は金箔を貼り、文字は墨色にする。すると太陽の光をうけ、光りがかがやく金色の中に、うつくしい墨色の文字が浮かび上がる。陶祖をたたえ、そして、とても美しい作品となる。

先人の事を考え、私の思いを入れ書き進めました。いささか思い込みが強くなり過ぎた部分もありました。おゆるし下さい。
今の瀬戸を生きる瀬戸の人たちが、先人を思い、そして、今を思う。この事がとても大事だと考えます。そして、この事が、今回の陶祖800年祭の意義の一つだと思います。
瀬戸のやきもの作りの一人として、自分の信じる作品が、結果として少しでも瀬戸の力になればと思いながら筆を置きます。

六角陶碑(外部リンク)

場所/愛知県瀬戸市須原町 陶祖公園内


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