瀬戸市馬ヶ城浄水場

2012/06/01 RE建築設計事務所 三輪邦夫

 6月1日〜6月7日は水道週間である。昭和34年(1959年)に厚生省(当時)により、水道について国民の理解と関心を高め、公衆衛生の向上と生活環境の改善を図る目的で制定される。

 瀬戸市は蛇ヶ洞、馬ヶ城、原山の3つの浄水場と上陣屋、穴田、南山口の3つの配水場から1日平均約4万1,000立方メートルの水を供給している(平成18年)。その中の1つ馬ヶ城浄水場は瀬戸市で一番歴史のある浄水場である。

 瀬戸市の中心を流れる瀬戸川を尾張瀬戸駅から多治見方面へ10分ほど車を走らせ、右折して山あいにはいると緑豊な風景に変わる。「馬ヶ城浄水場」と縦書きの表札が見えてくる。広大な敷地には貯水池堰堤、濾過池、配水地、事務所などが配置されている。資料によると、昭和6年に着工、昭和7年竣工、昭和8年に給水を開始している。

全体配置図
全体配置図

水源地事務所
水源地事務所

美しい貯水池堰堤の水門
美しい貯水池堰堤の水門

 コンクリート基礎の石橋を渡ると正面に水源地事務所が見えてくる。木造平屋建て、間口7.5間、奥行き4間の長方形とシンプルなプランである。小屋組みはトラス(洋小屋)構造、屋根は半切妻屋根(ドイツ破風)、スレート菱葺き、換気用飾り窓を設ける。外壁は腰壁付き下見板張り。南側正面中央に位置する1.5間の玄関、床は洒落たデザインモザイクタイル。西側は3間の事務所、観測検査機器が今でも働いている。東側は3間の寄宿室、南側に6畳2室間、北側に小使室、炊事場、湯殿を配置したシンメトリーのデザインになっている。近年、屋根は銅板葺きに、寄宿室は展示室に改修されたが、創建当時の雰囲気は失っていない。設計者は不詳。工事請負者は石川鎌吉他4名。

 3つの濾過池は敷地内の瀬戸川上流をはさんだ位置にある。石積み造りで今でも現役である。一日最大5,200立方メートル、瀬戸市の約1割の水を供給している。単調な濾過池にアクセントを与えている塩素滅菌機室はコンクリート造平屋建て、洋風庭園を思わせる設えである。刳り型の軒、めくらアーチ、角柱、石積風腰壁と、小さな建物にもデザインを怠らない当時の技術者の気概を感じさせる。

堰堤工事関係者の銘坂
堰堤工事関係者の銘坂

緩速濾過池
緩速濾過池

 施設側の説明によると、水の濾過には緩速濾過方式と急速濾過方式の2種類があり、当浄水場は緩速濾過方式である。濾過池は下から玉石、砂利、濾過砂の順に敷きつめ、濾過速度が1日3〜6mと遅く、微生物の働きと自然の浄化機能を利用して濾過することから水がおいしいというメッリトがある。反面、水を大量に供給するには広大な敷地が必要とされ、戦前の日本ではほとんどがこの方式だったのが、現在は濾過速度が速く、敷地面積も少なくて済む、薬品を用いた急速濾過方式が一般的になり、今では全国の5%たらずしか供給していない。「効率」と「安全」を考えさせられる説明でした。

参考資料:瀬戸の水(瀬戸市水道部)


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外部リンク:瀬戸市の浄水場

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