セト・ノベルティ

2011/10/01 瀬戸陶磁器工業協同組合理事長 池田洋幸
Wダンス磁器 板レース人形
Wダンス磁器 板レース人形
昭和26年頃 池田丸ヨ製陶(株)で製作

 愛知県瀬戸市は、瀬戸焼千三百年の歴史を有する日本を代表する窯業地であります。瀬戸において生産されているやきものは、食器や花瓶や茶器などですが、戦後の瀬戸窯業を けん引してきたのは、海外輸出用に生産されていた食器などのやきもの、その中で大きなウエイトを占めていたものがノベルティであります。では、ノベルティってどんなものか、皆さんご存じでしょうか?

 陶磁器製の置物や装飾品などを総称して「ノベルティ(Novelty)」と呼んでいます。ノベルティには多くの種類があり、古代人形、宗教人形、動物、鳥などの置物、キャラクター物、スーベニア(観光地のみやげもの)、花瓶、壁掛け、化粧用具、装飾性の高い食器等々で、その材質も、磁器、半磁器、白雲、ボーンチャイナ等多様であります。

 そして特に戦後、多くの日本製ノベルティが輸出され、欧米の家庭に潤いをもたらしていきましたが、日本で生産されたほとんどが輸出された事で、日本のライフスタイルの中で使用されることも極めて少なかったため、現在の日本人にとって大変馴染みの薄いものとなっています。その為、瀬戸が世界でも有数なノベルティ産地であり、その作品が世界中で高く評価されていたことを知る人は日本では多くありません。しかし、伝統で培われた技術と、瀬戸に産した優秀な原料等を駆使したことによって成立した『セト・ノベルティ』は、まさに瀬戸を代表するやきものなのであります。

W男女座り磁器ランプ
W男女座り磁器ランプ
現在もTK名古屋人形(株)で製作

 瀬戸においては、先にも述べましたとおり食器・花瓶などが主力の製品でありましたが、明治時代中期頃から新たに玩具の生産が始まり、招き猫・稲荷狐・福助・花入れ人形などが生産されていきました。その中でも、明治36(1903)年に、加藤佐太郎によって陶製の浮き金魚が生産され始め、最高時には月一万個の売り上げがあったと言われています。また、ドイツ製の見本をもとに、裸像やインドの神様を形どった、瀬戸では「インド人形」と呼ばれるものが生産され始め、輸出されるだけでなく、射的場の的として国内向けにも販売されていきました。これらの玩具は、ポン割と呼ばれる単純な型(二つ割)で製作されていたため、人形とはいうものの、現在の高級人形から見れば、陶器のかたまりみたいなもので、わずかに凹凸がつき、その上を金仕上げにして顔や手足を判別する代物だったといいます。これらの玩具類が、『セト・ノベルティ』の最初と言えると思います。戦後の瀬戸窯業は、戦災をほとんど受けていなかったことや、戦後の物資不足による生活用品の需要が高かったことなどにより、復興への道を確実にそして急速に歩んでいきました。戦時中に途絶えていた輸出も、制限付きながら再開されていくこととなりますが、輸出する商品には、占領下の日本を意味する「Occupied Japan」の銘を必ず入れなくてはならなかったのです。当初、輸出していたものは、戦前に生産し在庫として抱かえていたものや、戦前の型を使用して生産したものでありましたが、輸出が本格的に再開されると、すぐに高品質のものが生産されていくようになりました。そして、18インチ(約45cm)の高さを持つ大形人形の製造も可能になるなど、『セト・ノベルティ』は最盛期を迎えていくことになります。又、各メーカーごとに、自社の特色を生かしたノベルティが生産されるようになり、多種多様なセト・ノベルティが、世界中に販売されていくことになります。ここに、ヨーロッパのノベルティの模倣に始まった瀬戸のノベルティが、ようやくその模倣から脱し、『セト・ノベルティ』として自立し始めたのでした。現在では、円高や東アジアの生産地の台頭などによって、『セト・ノベルティ』の生産は低迷を続けていますが、その技術は、心ある方々によって守られています。

モリゾー・キッコロ
モリゾー・キッコロ
2005年愛知万博 池田丸ヨ製陶(株)で製作

 現在瀬戸市のノベルティ・こども創造館(愛知県瀬戸市和泉町74-1 TEL:0561-88-2668)に於いて、水に浮く陶製金魚を子供たちにすくう行事がなされ、大変好評を博しています。又、その館には瀬戸を代表する貴重なノベルティが数十点展示してあります。

 瀬戸陶磁器工業協同組合は昭和32年5月に愛知県陶磁器工業協同組合より輸出をしていた106社が分離独立をして出来た組合で、当時の組合名は瀬戸輸出陶磁器工業完成協同組合でした。昭和47年には、陶磁器輸出の全盛期を迎え、当組合も191社に増えました。現在は少数精鋭で毎年、東京ビッグサイトで開催される春・秋のギフトショ−で展示販売をしています。

 又、先程のノベルティ・こども創造館以外に各種イベントにも協力しています。どうぞ色々な機会にセト・ノベルティの歴史やその素晴らしさ、楽しさをご覧になって下さい。今後とも、更なるミュージアムの展開や『セト・ノベルティ』の再興に向けて、業界組織として努力をしてまいりたいと思います。

せとこま 狛犬あ・ん
せとこま 狛犬あ・ん  陶器置物 (株)IMARUYOで製作

掲載の記事・写 真・図表などの無断転載を禁止します。

著作権は深川神社またはその情報提供者に帰属します。