北川民次画伯アトリエ跡(瀬戸市安戸町)

2011/05/01 RE建築設計事務所所長 三輪邦夫

 メキシコと焼き物の街・瀬戸をこよなく愛した北川民次画伯のアトリエ跡が瀬戸市中心部に近いところにひっそりと佇んでいる。

アトリエ全景
アトリエ全景

 元二科会会長をつとめた北川民次は明治27年静岡県金谷町に生まれ、若くしてアメリカ、キューバ、メキシコに渡る。当時のメキシコの芸術運動の影響を受け、昭和11年帰国、昭和18年夫人の出身地である愛知県瀬戸市に疎開をする。以後25年間、隣の尾張旭市に引越すまでこのアトリエで制作した。この時期に画伯の代表的な作品が生まれたと言われる。

アトリエ内部
アトリエ内部

 アトリエは、坂の多い斜面を切り開いたわずかばかりの平地に建っている。東西に細長い敷地の西側に住まい、そして東隣にかつて「モロ」(室)と呼ばれた陶器工場を改造したアトリエがある。間口8間・奥行4間、周囲に壁を巡らし、窓が少なく、室内にはほとんど柱がない。比較的建ちの高い平屋づくりと「モロ」としての典型的な大きさの建物である。土間は当初はタタキであったがアトリエとして使うときに板張りに改造されている。梁は野ものが縦横に架かり、さぞ芸術家の創作意欲を駆り立てたことだろう。大正10年ごろに建てられたと言われている。老朽化も進み、建物全体の傷みがひどく一時は取壊しの運命に晒されたが、画伯と親交があった人たちで守る会が平成6年に結成され、年2回春と秋に一般公開しながら保存に努めている。

保存情報U 瀬戸市は斜面が多く、道が狭く、敷地が入り組んでいるところが多い。そしてところどころにこの「モロ」が見え隠れする。瀬戸市の景観を形成している重要な建物として、数少ない文化遺産として是非残していただきたいと思います。

 この記事は2010年10月1日に発刊した「保存情報U」=写真左=に掲載した記事に加筆・修正したものである。私が所属する(社)日本建築家協会東海支部愛知地域会保存研究会は発足以来、地域のさまざまな特色のある建物を建築家の目を通して取り上げてきています。多くの人たちが歴史的環境を訪ねていただき、これらの保存・活用の一助になればと期待するからです。

北川民次旧アトリエ:愛知県瀬戸市安戸町23


大きな地図で見る

掲載の記事・写 真・図表などの無断転載を禁止します。

著作権は深川神社またはその情報提供者に帰属します。