陶土山と山の神

2009/11/01 品野陶磁器センター・品野陶土株式会社 代表取締役 加藤春彦

 瀬戸音頭に「瀬戸は火の街、土の街」とも歌われますように、瀬戸焼の原料である陶土は、ここ瀬戸で江戸時代から採掘されているそうで、市内には数多くの鉱山があります。中でも窯神神社の北に広がる採掘場は、地肌の露出した広大な山や谷を見て、いつしか「瀬戸のグランドキャニオン」と呼ばれるようにもなりました。瀬戸市内の道路では大型トラックが行き交う光景が多くみられるのも、こうした陶土の採掘がさかんな地域性の一つともいえましょう。

 鉱山の多くは、市街地北部から水野地区南部の丘陵地帯にあり、おもに耐火粘土と珪砂を採掘しています。耐火粘土は、高温に耐え、発色がよい土として、ノベルティを始めとする上質な陶磁器を作ることに適した土として利用され、珪砂はガラスの原料として出荷されています。

品野陶土採掘場

【写真】=品野陶土採掘場

 ところで、この陶土の採掘をしている鉱山の多くには、山の神が祀られており、春と秋には神事が行なわれます。この山の神信仰というのは地域や職業・職域によって信仰の相が異なり、農山漁村ならびに職業集団によってかなりの幅があるようですが、『山の神が春になると里に降りて来て、田の神になり、秋にはまた山に登って山の神になる。』という伝承が広く一般には信じられているようです。

 これとは別に、鉱山においては、カナヤマヒコ・カナヤマヒメという神名の通り「金山」(かなやま、鉱山)を司る神を祀る神社も多く、この場合、鉱山で採掘された鉱石がご神体となる事もあるそうです。

 当社におきましても、65年程前より品野地区にて陶土の採掘を始め、耐火粘土として代表的な、炭化した木片を含み茶褐色をした木節粘土や、石英の粒が濡れるとカエルの目のように見える蛙目粘土を出荷しておりますが、鉱山に隣接する品野陶磁器センターの杜に祀ってある品陶神社にて、春は2月、秋は11月の7日のヤマノコ(山の講)の日の頃に、鉱山から受ける日々の恩恵に感謝をすると共に、採掘業務に従事する者の無事・安全を祈願する山の神の神事を瀬戸・深川神社の二宮宮司によって執り行っております。

 25年程前には、山の神、神事の直会として、品野陶磁器センター広場に株主、得意先等100名を越える方々を招待し、野外パーティを開催したり、紅白の餅を配ったりなど盛大な山神祭を催したこともありました。

  また、当社では長年に渡り、土地の神・土公神(と幸甚)が祀られた猿田彦神社(三重県伊勢市)へ毎年1月に参拝し、鉱山の繁栄と安全を祈願しております。

  創業以来、大きな事故や災害に遭うことなく、鉱山業務を無事に遂行してこられたことを振り返ると、これら行事の神聖さを感じずにはいられません。

品陶神社の山の神神事

【写真】=品陶神社の山の神神事

 近年、瀬戸の陶磁器業界は中国・東南アジアの台頭や、国内における他の産地との競争の激化により、大変厳しい状況下にあり、その原料の供給業界である私共もまさに岐路に立たされておりますが、山から採掘される土は、“山の神から頂いた、神からの産物(自然の恵み)”ということを今一度、原点に戻って振り返り、地域繁栄の源となるような益をもたらす道を見い出していきたいと奮起するところであります。

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