「ねぎさん」と、たまにお年寄りから呼ばれます。 禰宜(ねぎ)は、昔は神主さんの下、祝(はふり)の上の神職です。
「ねぎ」は、祈ぐ(ねぐ)からきています。まぁ祈るのがお仕事です。が、実は、毎日の一番の仕事は、お掃除であります。
それはさておき、時々あれこれとつぶやくのでお聞きください。
今年も、また彼らとの戦いがあった。
彼らとは、マイマイガである。昨年、大祓の前後に大量発生したマイマイガ。今年は、その幼虫の駆除を促すニュースも見たので、各地で猛威を振るっているようだ。昨年が壁にびしーっと張り付いていたと表現するならば、今年は壁にまばらに張り付いていると言えようか。しかし、今年は卵を産み付けられた箇所が非常に多い。1.5pから2p程度の楕円形の茶色のしみのようなものが卵である。表面は古い綿のようにぼよぼよしていて中に粒上の卵がある。貼りつた卵の表面が飛ばないように古雑巾などで覆って、そっとはがすときに「ベリベリッ」と音がするのが嫌だ。柱、軒下、天井など高いところに多くあり、彼らも子孫繁栄を願って産み付けるのだろうが、手が届かないのが悔しい。
マイマイガに辟易とする私の力強い味方がスズメである。昨今は、スズメが減少していると言われ、確かにこの辺りでも少なっていた。ところが、昨年のマイマイガの出現とともにスズメが群れで現れるようになった。スズメたちは、張り付いているマイマイガに急降下して素早く捕る。飛んでいる相手を飛びながら追いかける空中戦は見ていて非常に楽しい。時折スズメ同士で取り合いになっている姿は面白いし、子スズメに親がエサをあげているのは微笑ましい。朝、境内へ行くと、既にスズメたちの朝食が終わった証拠にマイマイガの羽だけが大量に桜の花びらのごとく落ちている。
先日、猫を川で溺死する様子をインターネット上にアップした男が動物虐待で捕まるという事件があった。本人は昼食を散らされたので罰だと言い、シカやイノシシはなぜ殺していいのだと抗議したらしい。記事を読んでなんてひどいことをするんだと思った。でも、シカやイノシシも農作物を荒らす理由で害獣駆除の対象になっているが、それも人間の勝手だと思うと、単純にこの事件を猫がかわいそうと読み流すだけではいけないような気がした。
私も境内で野良猫が糞をしていけば、それに対して怒り、追い払う。
ところで、知人の僧侶が夏は一週間ぐらい缶詰で勉強会があると言われた。それは、夏に外へ出てむやみに虫を踏みつぶしたりたたき殺したりしてしまうなら、部屋にこもって行を積むのがよいとのお釈迦様の尊い御教えに基づくものだそうだ。なるほどと思った。
昨日、巫女さんが朝の掃除のときに大きな羽音をして飛ぶ緑色の虫が迫ってきて怖かったと言った。緑色の大きな虫とは、なんだろうと考えた。
カナブン?緑コガネムシ?カメムシ?、、、、、どうもピンとこない。
そうしたら、私も昼過ぎに寸詰まりの竹とんぼのような緑色の虫が大きな羽音を立てて飛んでいく姿を見た。「えっ」と我が目を疑い感動した。「玉虫」である。夏に一度は窒フ切れ端、運がよければ死んでいる玉虫を見ることはある。しかし、生きて、しかも飛んでいる玉虫を見たのは初めてである。
マイマイガはたたき殺し、躍起になって卵をはぎ取るが、玉虫との邂逅を喜ぶ。
所詮、人間は、人間が基準になって物事の良しあしを決めるのだ、その傲慢さを改めて恥じるねぎどんである。
共存、共栄、夢のごとし。
日ごと空爆に苦しむ人たちがいることは、本当に心痛むばかりである。
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