なでこまいぬ

2014/05/14

4月12日からの「一の鳥居」竣工式典・行事から早くも一月が過ぎます。

ねぎどんは、その直後は、正直、精も根も尽き果てた感じで、最近ようやく体力と気力が戻ってきた気がします。そのため諸般のことが滞っているとは、完全に言い訳で、早い話回復力が低下している、すなわち、年を取ったということなのかとちょっと悲しい日々を過ごしておりました。

さて、本題です。そんなわけで遅ればせながら、陶彦社を護る新しい狛犬「なでこまいぬ」をご紹介します。実は、お披露目は4月19日の陶祖祭でして、最初は自分の居場所に少し落ち着かなかった様子の「なでこまちゃん」ですが、もうずいぶん神社になじんできてくれたようです。

なでこまいぬ

鎌倉時代に陶祖が奉納したと伝わる重要文化財の狛犬は、宝物殿にあります。その狛犬は、400年ほど前の火災で左前脚を失い、木をあてがってあります。右脚も膝から下がぽっきりと折れ、木を芯にして差し込んであります。後肢はというと、両方とも指から先がありません。それでも、長い年月に耐え、しっかりと目を見張り神社を見守ってきてくれます。威厳がある中にも親しみがわく風貌と四肢が傷つきながらもたくましい雄姿を見るたびに、ご参拝のお客様にもっと身近に陶祖のお力を感じてもらいたい、狛犬の力にあやかってほしいという思いが湧き上がりました。

そこで、陶祖800年祭の最後の年、一の鳥居も再建され重ねて喜ばしい今年を絶好の機会と考え、御神前に納めることにしました。作品を手掛けていただいたのは、狛犬屋 巽彫刻 綱川 潔氏=写真左=です。重要文化財の狛犬の寸法を測り原寸大で、また特に傷ついた脚の部分の雰囲気をそのまま出すことをお願いしました。2月のまだ寒い頃、製作途中を見に工房を訪れました。石がゴロゴロと転がり、創りかけの狛犬が何匹かいたり、高さが1mもあるカエルがいたり、削り取った大小の石の欠片が散在したり、石屋さんの工房は「男の職場」という荒々しい感じでした。屋根はあるものの半分屋外のような工房には暖房器具一つなく、「寒くて作業も大変ですね」と声をかけると、「そんことはないよ。30分も作業していれば冬でも暑いぐらい」と闊達に笑いながら言われてしまいました。その時は八割ぐらいの仕上がりの段階で、粗方の形はできているものも、実物の狛犬のかなり細い脚はまだ太く、四角い石の中に顔があるといった体裁でした。

そして、できあがった「なでこまいぬ」は、ご覧のとおりです。

ちょっとやんちゃな顔つきがかわいくて一目見て気に入りました。どこか作者に似ています。どうか「なでこまちゃん」を末永く可愛がっていただきたいと思います。犬は、忠実な生きもの、優しくなでて下さるあなたをきっと末永く見守ってくれると思います。

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