「ねぎさん」と、たまにお年寄りから呼ばれます。 禰宜(ねぎ)は、昔は神主さんの下、祝(はふり)の上の神職です。
「ねぎ」は、祈ぐ(ねぐ)からきています。まぁ祈るのがお仕事です。が、実は、毎日の一番の仕事は、お掃除であります。
それはさておき、時々あれこれとつぶやくのでお聞きください。
日中の陽射しはまだ厳しいですが、朝夕涼やかな風になり、木の葉もパラパラと落ち始め、季節は秋へと動いているのを感じます。高校生の巫女さんが、「ツクツクホウシが鳴くといやだ」と言いました。その訳は、オーシンツクツクが聞こえ始めると、夏休みももう終わりが近いからだそうです。
さて、いよいよ10月に御遷宮を迎える伊勢神宮に7月、8月と続けてお参りする機会がありました。人出が非常に多くなっているとは聞いていましたが、久々に訪れた神宮には、特に若い方や外国の方が多くなっていることに驚き、ここは「観光地」であると感じました。この暑さなので、服装は、ランニングに短パン、サンダル履きなど、涼を求めて軽装になります。おかげ横丁辺りでかき氷を食べたり、自由に参拝したりするには、まあそれでよいでしょう。
しかしながら、それでは通らないのが、御垣内参拝です。御正殿をぐるりと囲む瑞垣の内でお参りすることを言います。男性は背広にネクタイ、女性もそれに準じる服装でなければ中に入れてもらえません。たとえ子供であっても、靴はスニーカーではだめです。伊勢神宮の事務所である神宮司庁に尋ねると、「結婚式、卒業式などに出席されるときの服装とお考えください」との返答が返ってきます。また、御垣内は、お参りをさせていただける位置も決まっていて、御神前に一番近いのは、もちろん、天皇陛下が拝礼される場所であります。
そういう尊い場所ですが、この夏に行われているお白石持行事は、一般の人が御敷地へ入り、御正殿の間際を通り、裏へ抜けることができる唯一の貴重な機会です。参加する服装は、足元から全て白。その上に、揃いの法被をはおり、鉢巻を絞めます。「白」は、穢れなきこと、心も清浄であることの印です。御敷地に敷き詰める白石を一つずつ手で運びます。私も参加させていただきましたが、ヒノキの香りが芳しい真新しい御正殿は、とても美しく神々しかったです。
神の前近くに進み出るときは、それぞれの場合にふさわしい服装で臨んでいただきたいものです。神社に御祈祷を受けにいらっしゃる方も、少々ラフな服装が多いのが最近は気になります。たとえば、仕事で取引先の社長に面会するとき、どのような服装で出かけるでしょうか。まさかTシャツでは行かないでしょう。そう考えると、人よりも貴い神様に自分を御守りいただくためのお願いに参上するのであれば、それに合った服装で出向くのがよろしいと思います。
神様は、広い御心であられますので、服装により人を差別はされないでしょうが、やはり、その場に応じた礼儀というものを重んじることが大切だと思います。
掲載の記事・写 真・図表などの無断転載を禁止します。
著作権は深川神社またはその情報提供者に帰属します。