8月つれづれ

2011/08/14

8月は、明るく、眩しすぎる。太陽が容赦なく照りつけて、痛い。
青い空は、くっと天空に張り付き、入道雲などが湧き上がる。
8月は、その輝くばかりの眩しさが、なぜだか裏哀しさを帯びる。

母の叔母、84歳。
「8月はキライだ」と、ぽつんと言った。
戦後66年。
彼女は、多感で、そして、一番楽しく、はじけるはずの青春時代を、どんな思いで過ごしたのだろうか。
そんな話を、彼女の口からついぞ聞いたことがなかった。
初めて耳にしたつぶやきに、はっとした。

今朝、テレビで、絵本「ぞう列車がやってきた」のことをとりあげていた。著者の小出隆司氏が、絵本の作成にあたり、当時の話をうかがうため初代東山動物園長 北王英一氏に会いに行ったとき、開口一番にこう言われたそうだ。

「私の心の中をえぐるのですか」

私など、事の経緯を聞くだけで胸が痛くなり、絵本の場面が映し出されただけで涙がこぼれるのに、非常に厳しい戦時下で、愛情を注いで飼育してきた動物たちが見殺しにされる飼育者の心中は、想像を絶するにある。

じりじり照りつける陽射し。
じーじーと蝉が鳴きざわめく。
8月は、明るく、楽しく、そして、哀しく終わっていく。

そんな中、木陰で、ひらひらとたゆたうオハグロトンボ。
なんとなく心が和む。
たいてい二匹でゆらゆらしている。
すいーっと風を切っては飛ばない。
ふうわり、ふうわり、漂うように飛んでいく。
暑さは、性急だ。
でも、オハグロトンボたちは、暑さの中に涼しく浮かぶ。

今年は、とりわけ様々な魂が日本各地を漂っていることだろう。

境内でセミをとる子どもたち

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