新月の和紙

2010/04/15

落ち葉降るねぎどん泣かせの若葉の季節となりました。今回は去る3月27日に行った第12回講話「新月の和紙」について参加された方から感想をいただいたのでご紹介します。

個人的にはお月様ではうさぎが餅つきをしている方が夢があり好きですが、今はかぐや姫ならぬ日本人で二人目の女性宇宙飛行士が宇宙へ行く時代です。しかしながら、人々が満ち欠けに畏怖の念をいだいていた古より変わることなく、お月様は地球上に不思議な力を及ぼしています。その一端を改めて認識する貴重なお話を聞くことができました。

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 先日、古民家・久米邸にて「新月の和紙」をテーマにした講話会に参加させていただきました。新月伐採した原料で和紙を作ることにまつわる話です。

 新月伐採とは、冬の乾燥した時期の新月の頃に木材になる木を伐採することで、不思議なことにその木材は腐食しにくいとか、狂いが生じにくい、虫に強いといった特徴を持つようになり、木材としてのランクが格段に高まるのだそうです。

 講師である近藤和子さんは、荒れ放題だった古民家とその庭を、仲間たちとともに自分たちの手で何年もかけて、手入れ、手直しをして今の形にしたそうです。この日は時間がなかったので庭などをゆっくり見ることはできなかったのですが、後日再訪して見て回りましたところ、どこか懐かしい感じのする、気取りのない素敵な庭でした。

 この庭の一角に、やっとの思いで手に入れた楮の苗を植えたところ、苗木屋さんの予想に反してしっかり根付いてくれたそうです。

 この楮ですが、この日の時点では、地面から30センチほどのところですっかり切りはらわれて枝葉もない状態なのですが、これから切り口の脇からいくつも芽が出てきて夏までには何メートルも伸びるというので驚きです。

 自分たちの工房の庭で、自分たちで植えた木がぐんぐん成長していく姿を見ているのですから、そこからできる素材はこれ以上ないくらいに間違いのないものでしょう。そしてその作品は愛情もたくさん込められたものであるのは想像に難くないと思います。

 この楮たちの成長、伐採と、これから注目していきたくなりました。折を見てまた訪ねていこうと思います。また、機会があればこの楮たちから分根なり挿し木なりさせてもらって、自分で栽培した楮で和紙をすく、なんてことができたらと想像すると楽しくなってきます。

 これまで、特に強い興味を和紙工芸に対して持っていたわけではないのですが、こういったいい機会に恵まれたおかげで、今後旅行先などで伝統工芸に触れることがあったなら、今までとは違った目で楽しむことができるのではないかと思います。

宮尾国之

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