「人間の感覚」と「病は気から」

2009/09/16

7月のギックリ腰経験談を読んだ方から「5日で治ったの?」と言われましたが、とんでもございません!目前の神事という急場をしのぐことはできました。しかし、それから2ヶ月ほどは、くら〜いくら〜いトンネルの中を彷徨っているように、痛みが消えず「いつ出口にたどり着くのか…」と、とても苦しかったです。「ギックリ腰は、一度やると癖になりやすい」と人から言われるたびに落ち込みそうでした。そんなとき「そうならないようにしっかり治したい」と先生の力強い言葉に本当に励まされました。

手というものは、手を当てるだけで「手当て」。幼い頃に「痛いの、痛いの、とんでけ〜」と、お母さんにそう言いながら手でさすってもらうと不思議と痛みが薄れたという記憶はありませんか。誰かに手を握ってもらうだけで安心感がもてます。祈るときに合わせる自分自身の手と手にはエネルギーがたまるようです。手は、日常的な生活の作業をするだけでなく、触れることから心を通わせる不思議な器官だと思います。そんな手や自分自身の体をもって人の体を整体の文字通り「整える」という術にたいへん心動かされました。今回は、お世話になった先生からご寄稿いただきましたのでお読み下さい。

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「人間の感覚」と「病は気から」
こんにちは、東栄鍼灸接骨院 院長の桂川です。日々感じていることの中から「人間の感覚」と「病は気から」について少しお話させていただきます。

接骨院、鍼灸院、治療院などでは、病院のような器械による検査ができない為、患者さんを診察する際に主に問診(話を聞く)、視診(目で見る)、触診(手で触る)など自分の感覚を頼りにします。はじめからいろいろなことが判るわけではありません。経験を積んでいくと今まで判らなかった様々な状態、例えば、歪んでいる、固くなっている、腫れているなどのほんのわずかな変化でも判るようになってきます。

少し話は変わりますが、「きさげ」という金属を削る技術をご存知でしょうか。車の部品などを作る機械のもとを作るときに使われる技術で、鉄のシャフトに木の柄がついて、先端に超硬の刃がついている長さ1メートルほどの「のみ」のような道具を使い、人間の手で金属を削ります。金属の表面を可能な限り平に仕上げるのを機械でやると百分の一ミリ単位までしか平らにならないのに、人間の手で行うと「きさげ」は千分の一ミリ単位まで平にするそうです。人間の手は、機械より精度がいいのです。人間の感覚ってすごいと思いませんか。人間の感覚は、日々使って磨いていくと鋭くなってきて、極わずかな変化でも判るようになってきます。逆に使わずにほかっておくとどんどん衰えていきます。恐いものです。頭を使わないとボケが早くなりますよ(笑)。

ところで、病は気からという言葉があります。同じ病でもその人の気の持ちようで治り方は変わってくるように思います。いつも思っていることですが、病は治療する人が治すのではなく、患者さんご自身の自然治癒力で治るもので、私たちは、その手伝い、自然治癒力を引き出すきっかけや体の環境を作ってあげることをするだけです。そのためには、患者さんとの信頼関係、治療に対する理解が大切になってきます。それなしでは治療効果を最大限に出すことはできないと思っています。

治らないと思っていては、治るものも治りにくい、逆に絶対によくなるんだという強い気持ちがあれば病が早く治る気がします。目に見えるものではないし、はっきりしたデータがあるわけではないのでわかりにくいですが、15年間治療に携わってきて、患者様の心の持ち方、治療する人への信頼関係は、病の治り方に大きく関係してくるものと感じています。

最後に、どこか体の調子の悪い方は、もう治らないとあきらめるのではなく、よくなるんだと思って下さい。そう思わなければ治るものも治らないと思います。そして、いま治療をされているならその先生を信頼してあげて下さい。そうすればきっとよい結果が待っていると思います。

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