人と虫

2009/06/08

あらかわいい!秋から待っていた子どもたちがうようよと、6月4日に出てきていました。本殿の賽銭箱の横に置いてある台の脚に産み付けられた卵を発見!その色と形状はあまり好きではありませんが、赤ちゃんカマキリの誕生は楽しみでした。赤ちゃんカマキリは1センチほどの大きさで、透明感のある黄土色とも肌色ともいえるような色をしています。

神社に隣接する「瀬戸パークホテル」の昆虫博士くんによると、カマキリは4回の脱皮を繰り返して成虫になり、秋には産卵するということです。多く生まれてもほとんどが捕食され、赤ちゃんカマキリの最大の敵はアリだそうです。生き残った数匹も、カマキリの雄は雌に食べられ、雌は卵を産むと死んでしまいます。昆虫のほとんどが成虫になるのは、交尾して卵を産むためだけといえる短い命であると博士君は言います。化学的には人間と変わらない物質で構成されている生命体だけど、これほど違うことが何よりもおもしろいのだそうです。

この季節は、様々な虫が活発に動き始めます。その中にはあまり遭遇したくない虫もいます。その一つがムカデ。

つい先日も神楽殿の拭き掃除をしていて戸をスライドさせた途端、上部の溝にチラッと見える、うごめく足とくねる胴体。15センチくらいのムカデくん。これとは断固闘わねばなりません。以前もかわいい巫女さんが掃除をしているときに、やはり戸を動かしたら降ってきたことがあるので大変です。かといって叩き潰すのもいやだし…急いでバケツとホウキを手にして、ムカデくんにはその手足(どこからどこまでが手なのか足なのか?)の鍛錬に水泳に挑んでいただきました。

ごめんなさい。虫を殺生するときは、いつもカフカの小説「変身」が思い出されてなりません。

虫にまつわる話を最後にもう一つ。

伊勢神宮の近くで御札や御守を奉製している会社の社長さんが神社に立ち寄られました。お目にかかったのは数年ぶりです。社長さんが毎朝愛犬の散歩に近くの山に入られることを知っていたので、お尋ねすると残念ながら愛犬は最近亡くなったとのこと。

こから伊勢の生態系の話になりました。

犬の散歩の折、6、7年前には山に入ると犬の口の周りに蚊が真っ黒にたかったそうです。しかし、ここ数年はたかるほどだった蚊がいなくなった。それは蚊が生息できる下草が生えなくなったためで、山には下草が生えるためだけの保水力がなくなってしまっているのだそうです。

その理由は、しとしと土に滲みこむ、つまり植物の根に届くような生命を育む雨が降らなくなり、ゲリラ豪雨と言われる激しい雨が山の表面の土壌を削って川に土砂を流し込む。そして、その大量の堆積物は、五十鈴川の小動物の棲む場所を奪ってしまうのだそうです。だから五十鈴川は確かにきれいだけれども、それは昔のように生命を感じる川ではなくなっている、と寂しそうにお話になりました。

ねぎどんは、神社で仕事ができることがいいなと思うのは、いろいろな生命体に出会うことです。人は、たまたま人であって、他の生命となんら変わりはない一つの生命に過ぎないと思います。おごるなかれ。

「一寸の虫にも、五分の魂」日本人は命を大切にしてきた民族だと思います。

あっ、でも正当防衛は許される…?

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