絵馬

2008/10/31

秋も深まり、神社の木々も紅葉が始まっています。これからしばらくは掃き掃除にいそしむ時期となりました。この落ち葉がなくなる頃はもう年末です。そして、気がつけばお正月…これからの日々の時間の流れは、毎年のことながら何倍速なんだろうと思うのは、ねぎどんだけでしょうか。

さて、今回は絵馬のお話です。

毎年その年の干支をあしらった絵馬、または絵馬のついた破魔矢などを神社で受けて玄関先などに置いていらっしゃる方も多いと思います。また、どの神社にもたいてい絵馬かけがあり、たくさんの方が願い事を書いた絵馬を奉納されています。当神社でも、初宮詣にいらしたご両親は、張子の絵柄の絵馬に赤ちゃんへの健やかな成長を願う言葉を記します。受験を控えた学生の方々は、合格を願いつつ絵馬のダルマに片目を入れていかれます。人々の願いを託す絵馬は、神社になくてはならないものです。しかし、なかなか本来の「絵馬」は見かけなくなったようです。

本来の「絵馬」、つまり絵に描いた馬です。古くより馬は神様の乗りものと考えられ、生きた馬を献上する習慣がありました。馬は神事にも必須のもので、たとえば雨乞いには黒毛の馬を、晴天を祈願するには白馬を献上したという記述も文献に残っています。しかし、生きた馬を奉納するには費用もかかります。そこで、その代わりとして木製や土製の馬を奉納し、さらに馬を描いた板を奉納するようになりました。

時代とともに変化した絵馬の展示「絵馬に学ぶ」を、熱田神宮宝物館で見る機会がありました。その説明によると、最古の絵馬は飛鳥時代で、中世に入ると絵馬に個人の願いを託した奉納品としての役割が出始め、そして、室町時代後期から絵柄にも馬以外の動物や、神仏、人物などが描かれるようになったとあります。ねぎどんが興味深かったのは、もっと世俗的になる江戸時代中期以降の絵馬で、庶民の暮らしの素朴な願いがその絵柄に読み取れました。

どんなものがあるかというと、目の形を八つ描き「病む目」で眼病平癒を祈願、お乳がよく出るようにと女性がお乳を搾り出す姿、散髪嫌いが治るように父親が子供を剃毛している図柄、逆さに松を描いて逆睫毛平癒の祈願など実に様々で、ご覧いただけないのが残念です。なかでも一番傑作だと気に入ったのは、見た瞬間に思わず笑ってしまったのですが、女という漢字に真ん中に錠前を描いた図です。女に鍵をかける、女を断つ、つまり、浮気を断つ。人の悩みはいつの時代も変わりませんね。当神社もこのアイデアをいただいて絵馬を作れば、きっと隠れた人気を呼ぶのでは…?

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