フランス月間

2008/05/01

クスノキの枝がようやく落ち始め、そろそろ落葉も終わりに近づいたと、ほっとして腰をさすっております。なかなか常緑樹の落ち葉掃きは、毎年のことながらきついもので、まだまだゴールデンウィーク明けぐらいまでは、ほうきを手放せません。

さて、4月の深川神社はフランス人とのご縁が重なりました。

1つ目のご縁は、陶祖祭(19日、20日)の行事の一つとして執り行われた「JIMO婚」(地元で結婚式!)でのこと。今年の式に参加されたのは、瀬戸市品野町の花嫁とフランス人の花婿でした。お二人のご縁は2005年の愛知万博で、フランス館のパーティーで出会ったそうです。だったらねぎどんも、もう少し足繁く万博会場の外国館を回ればよかった…(笑)。

結婚式の一瞬間ほど前の打ち合わせに訪れたお二人の課題は、「誓詞」。新郎の日本語は挨拶程度なので、日本語で書かれた誓詞を二人で声を合わせて奉読するにはちょっと練習が必要のようでした。当日、神前に向かう花婿は非常に緊張した面持ちでしたが、よどむことなく奉読され、お二人の息のあったところを披露していただきました。ご参列の方も、きっと神様もさぞ驚かれ、お喜びになられたのではないでしょうか。

ねぎどんも、フランス人の新郎に負けぬようにひそかに練習したことがあります。それは、フランス語での式の進行。これまでも国際結婚式は何組か行ったので英語を交えて式を進めたことはありますが、フランス語に関しては全くの門外漢。新郎新婦にもフランス語は全く分からないと伝えてあったので、式の始まりをいきなりフランス語で言い始めた私に、お二人は目をぱちくりしていらっしゃいました。

まあ、必ずしも上手とは言えない即席フランス語であったのでしょうが、式の後、お二人から「とてもびっくりした。でも本当にうれしかった」とのお言葉いただきました。そして、花婿からは「この神社は、私の人生でもっとも尊い場所の一つになりました」と、大変ありがたい感想も聞かせていただきました。

2つ目のご縁。実はその結婚式のフランス語のご指導は、フランス在住の武道家、望月拡雄先生から受けたのです。先生は、養正館武道をフランスで始められた宗家であります。23名のフランス人ら門下生を引率しての来日で、瀬戸にも立ち寄られました。このことは、中日新聞近郊版に記事が掲載されたのでご存知の方も多いと思います(養正館武道は、神社の裏の剣道場「神武館」で練習をしています)。

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■養正館 フランス(http://www.yoseikan.asso.fr/

■養正館 日本(http://yoseikan.txt-nifty.com/ )

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一行は瀬戸に4月14日に到着し、練習や市内見学をされました。瀬戸を発つ17日には、神社での正式参拝を執り行わせていただきました(正式参拝は、お祓いを受け神前に玉串を奉り拝礼すること)。そのときのご奉仕は、ねぎどんにとっても大変貴重な体験となりました。

神道について少し触れてから一行を神楽殿に案内しました。神事に先立ち「今からの神事は、お世話になったこの土地の神様へのお別れの挨拶だと思って下さい。瀬戸での様々な思い出と感謝の念を心に受けて下さい。」と申しあげました。始まりの合図の太鼓を打った瞬間から、空気は静かに澄んで緊張しました。祓い詞を奏上するねぎどんは、背中に皆さんの気持ちが伝わるのを感じました。

正直な話、こんなにも清浄な感覚を背に受けたことは、これまでなかったよう思います。たとえば講演会、演劇などで話し手にみんなの気持ちが集中し、しーんと静まり返る空間を体験することがありますが、それと似たような感じです。これは、おそらく外国人の皆さんが、非常に純粋で真摯な気持ちで神事に臨まれ、それぞれの神様への思いが伝わったからではないでしょうか。そして、二礼二拍手一礼にての拝礼は、さすがに武道を志す人たちなので皆さんそろって整然と立派にされました。

望月先生が「武道という道を歩むのに日本人もフランス人もない。したがって彼らにとってもここが『ふるさと』なんですよ。」とおっしゃっていた言葉が心に残っています。

神道がある意味、宗教ではないと言われるのも、元来、教義や経典を持たず、八百万の神というぐらい数限りなく神がおり、その神の拠りしろは日本人でもフランス人でも誰でもが捉えることのできる自然の万物や現象だからだと改めて思いました。

前後してフランス人の花婿とフランス人の武道愛好者たちを迎えたことは、全くの偶然ですが、何やらただの偶然ではないかもしれないと感じたねぎどんでした。

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