さくら、この花

2008/04/06

境内の桜は、風に舞い始めました。今年は天気に恵まれて、大変長くさくらを楽しむことができました。日本列島民族大移動の一つであるお花見。もし、桜の花が点灯しそれに集まる人も蛍のように光るならば、土井さんが今頃宇宙から見ればさぞかしキラキラと輝きが美しい日本列島が浮かび上がることでしょう。

街のあちらこちらにぽわっぽわっと薄ピンク色が見え隠れする、いつもなら下を向いて通り過ぎてしまうのに、ふと上を見上げる人も多いのではないでしょうか。花よりダンゴ、花よりビールという方もいらっしゃるでしょうが、初めに花ありき、ですから、日本人をこれほど浮き足立たせる樹木はほかにないと思います。

さて、その桜の花を名に頂く神様と言えば、コノハナサクヤヒメ(古事記:木花之佐久夜毘売、日本書紀:木花開耶姫命)です。コノハナが、桜のことです。とても素敵な名前なので、ねぎどんは大好きです。山の神オオヤマツミの娘で、天孫ニニギの妻となり一夜で身ごもりました。美しいだけなく、この神様はなかなか肝の据わった方です。一夜で妊娠したことを疑われたので、身の潔白を示すために、産屋に一人で入り火を放ち、炎の中でホデリ(海幸彦)、ホスセリ、ホオリ(山幸彦)を生んだのです。

コノハナサクヤヒメを祀るのは、富士山本宮浅間大社であり、富士山の神霊でもあります。富士山との結びつきは定かではないようですが、山の神の性格と炎との関わりからなるほどと思います。火の中で無事に子を生んだことから、安産の神様としても崇敬を集めていますが、出産は女性にとって炎に身を投じるほどに危険な一大事であることの象徴のようにも思われます。

また、その潔さは桜に通じるところがあると思います。桜は、ぽつぽつと咲き始めたら、あとは満開までは勢いに乗り咲き誇り、そして、はらはらはら、と一気に散ります。見事に咲き、見事に散る。これがこの花の魅力の一つであり、日本人の美意識に合う、いいえ、逆にひょっとしたら日本人の美意識を培ったかもしれません。

「昔の人は死を重んじ、りっぱな死に方をしたいと念じた。正しく生きた人でないと、美しい死に方はできぬ。見事な死にようをした人は、見事な一生を貫いた人である。」最近ある本でこの文章に行き当たったとき、桜がぱっと思い浮かびました。

桜と西行法師、桜と萩原朔太郎、サクラと寅さん、、、んっ?

みなさんは、桜を眺めて何を思われた春でしょうか。

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